子どものガミースマイルは治療できる?治療法と開始時期について
【監修:歯科医師 長谷川雄士】
お子さんが、歯の見えるくらいのとびきりの笑顔を見せてくれた時に歯茎が一緒に見えることはありませんか?もしかするとそれはガミースマイルかもしれません。
ガミースマイルは口が乾燥したり口呼吸を誘発する原因になる場合もありますが、子供のうちに治せる治療方法もあります。
今回はガミースマイルの「原因」「治療方法」「治療の開始時期」などについてお伝えします。
【目次】
1、ガミースマイルの状態について
・ガミースマイルの遺伝的な関係について
・ガミースマイルは放置しても大丈夫?自然に治ることはあるの?
・子供のガミースマイルなぜ起こる?その要因と治療法
2、治療法別に治療開始のタイミングについてご紹介
3、子供のうちに行う歯列矯正はメリットが多いです
・子供のガミースマイルにインビザラインは適用可能?
ガミースマイルの状態について
「ガミースマイル」とは、歯が見えるように笑った時に歯茎も一緒に見えてしまう状態のことです。英語で歯茎は“gum”、笑顔は“smile”、この2つの英語より“gummy smile”(ガミースマイル)と呼ばれます。他にも“gummy face”(ガミーフェイス)と呼ばれることもあります。
1つの基準として笑った時に見える歯茎が3mm以上だとガミースマイルとされます。テレビに出ていらっしゃる方でもよく見られます。見た目に大きく影響することは少ないですが、笑った時に歯茎が目立つことを気にしてうまく笑えず笑顔に自信が持てなくなってしまう方も多くいらっしゃいます。
また、ガミースマイルは口臭や虫歯などお口のトラブルの原因になることもあるので注意が必要です。
ガミースマイルの遺伝的な関係について
両親のどちらかあるいは両方がガミースマイルであれば、お子さんに遺伝する確率は高いと言えます。
とは言ってもガミースマイルがそのまま遺伝するわけではありません。歯茎や口周りの筋肉の発育状態・骨格の形などが遺伝することによって結果としてガミースマイルが遺伝することになります。しかし、それらの要素が全て遺伝によって決まるわけではありません。生活習慣や口周りの癖(指しゃぶり、舌の癖など)が原因となっている場合もあります。
骨格や筋肉の成長・発達が著しい子供の時期から、口周りの癖を直したり、正しい舌の位置を意識するなどしてガミースマイルを予防する方法もあります。
ガミースマイルは放置しても大丈夫?自然に治ることはあるの?
ガミースマイルは目立ちにくくなることはあっても自然に治ることはありません。ガミースマイルを引き起こす原因としては、①歯の長さと生える位置、②上唇の筋肉が強すぎる、③骨格の問題などが挙げられます。ガミースマイルを治すためには歯の位置や大きさ・骨格を変えるなどの処置が必要になるので、自然に治ることや自力で治すことは難しいです。
軽度の状態であれば、笑い方をトレーニングすることで目立ちにくくなることがあります。ガミースマイルの方の中には、笑うときに上唇が上がりすぎてしまい歯茎が見える範囲が大きくなってしまうことがあります。トレーニングでは上唇が上がりすぎないようにする練習や口角の上げ方などを練習します。しかし、笑顔が不自然になったり上唇の筋肉が想定外に発達してしまうことも少なからずともあります。
治療のことはもちろん、このようなトレーニングについても一度歯科医院で相談をしてから始めるのがおすすめです。
乳歯が生えているお子さんに関しては、永久歯と生え換ることでガミースマイルが目立たなくなることもあります。お子さんのガミースマイルでは遺伝的な要因の他、お口周りの癖(指しゃぶりや舌の癖)などいくつかの要因が考えられます。お口周りの癖の改善や歯列矯正治療によりガミースマイルが改善することもあります。お子さんのガミースマイルが気になり始めたら歯科医院で一度診てもらいましょう。
子供のガミースマイルなぜ起こる?その要因と治療法
①歯の長さと生える位置
歯自体が短かったり歯の生えている位置が低いと、その分、歯茎が見える範囲が大きくなりガミースマイルになりやすいです。また、前歯が前方に突出している出っ歯(上顎前突)の状態だと、笑う時に上唇が前歯をつたって上に持ち上がりやすくなるため、ガミースマイルになりやすいです。他にも、歯が完全に生えきらない状態で部分的に歯茎に埋もれた状態になると歯が短く見え歯茎が見える範囲が多くなるためガミースマイルになりやすいです。
【治療法】
歯の長さや歯の生える位置が原因となるガミースマイルは、お子さんにおいては矯正治療や口周りのトレーニング(MFT)により改善できます。MFT とは口腔筋機能療法とも呼ばれ、咀嚼・嚥下機能や舌・唇の正しい動かし方をトレーニングにより身につけて正しいお口の発達を促していく治療です。
②上唇の筋肉
上唇の筋肉が通常より発達していることで笑った時に上唇が持ち上がりすぎてしまい、歯茎の見える範囲が大きくなってしまうこともあります。
【治療法】
お子さんにおいては、口周りのトレーニング(MFT)により上唇の筋肉を改善する方法や歯の矯正治療による治療法があります。大人の方のガミースマイルの改善にはボトックス注射を使用することもありますが、お子さんには使用できません。
③上顎の骨格の発達
ガミースマイルで一番多いとされる原因です。上顎の骨が成長し過ぎることで上顎が前方に突出するような骨格になります。そうすると前歯と歯茎も前方に突出するような状態になりガミースマイルになりやすいです。
【治療法】
お子さんにおいてはヘッドギアを使用して矯正治療を行う方法もあります。骨格の過剰発達が要因となるガミースマイルは将来的には外科処置による治療が必要になることもあります。上顎の骨を切除し引っ込めることで上顎の骨の突出を改善します。「上顎骨体移動術」と言われます。
治療法別に治療開始のタイミングについてご紹介
子供の時期は骨格や筋肉が発達途中であるため、成長期を終えている大人と比べて矯正治療の効果がでやすいです。しかし、子供においても体の成長・発達が進むことで、治療法によっては理想とする結果まで到達できないこともあります。そのため、ガミースマイルの治療は治療開始時期が重要になります。この項目では、治療法別に効果が出やすい治療開始時期をお伝えします。
ヘッドギア矯正
6~9歳頃に始めると効果的な治療です。上顎の骨の成長を抑える効果があります。ヘッドギアは3種類ほどありますが、その1つの仕組みとしては奥歯に金属のバンドを装着してからその部分にフェイスボウと呼ばれる装置をご自身で装着します。フェイスボウとベルトをつなぎ首にかけることで歯並び全体を後ろ側に動かすことができます。装置は目立ちますが学校から帰った後に使用することもできます。
インビザライン
7~9歳頃から始めると効果的な治療です。子供の矯正治療にもインビザライン(マウスピース矯正)が使用できます。インビザラインでは子供専用に「インビザラインファースト」を使用します。インビザラインファーストでは、成人用とは異なり生え換わりの状態を見据えて作成したマウスピースを使用します。インビザラインファーストが使用可能な条件には、6歳臼歯と前歯の頭が2/3見えるくらいに生えていることです。この条件に合う時期がだいたい7~9歳頃となります。
MFT
6歳頃から始めると効果的な治療です。口周りの筋肉のトレーニングを行って改善する方法です。特に「上唇の筋肉が過剰に発達している」場合に、効果的な治療方法です。基本的に装置が必要なく、使用するとしてもマウスピースのような装置で、小さい子でも使用できるためどの年齢でも始めやすいです。ただ、複数のトレーニングが必要になるため小さい子だとトレーニングを難しく感じてしまうこともあります。そのため、複数のトレーニングを理解して行うことのできる6~7歳頃が治療開始時期の1つの基準となります。
子供のうちに行う歯列矯正はメリットが多いです
子供の時期は筋肉も骨も発達の途中なので大人と比べて顎骨や口周りの筋肉が柔軟です。そのため、歯列矯正治療を始めるには子供の時期が最適と言えます。最近の傾向としては比較的顎の小さい子供が増えてきています。顎が小さいと永久歯への生え換わりが上手くいかず、歯と歯が重なったり、埋まったまま生えてこなかったり、歯が傾いたりして、歯並びが悪くなってしまうことがあります。
子供の時期は顎の成長を利用しながら小さめの顎を少しずつ拡大し、永久歯の歯並びや咬み合わせをキレイに整えられる治療を行うことが可能です。ガミースマイルの場合は上顎の骨格が大きく発達することが原因の場合もありますが、そのようなケースでも子供の時期であれば顎の成長を抑えることで改善する治療も行えます。
また、子供の頃の口周りの癖は歯並び・咬み合わせ・発音・咀嚼や嚥下機能にも悪影響を与えてしまう場合があります。例えば、指しゃぶりや口呼吸、舌で前歯を押す癖などです。これらの癖は、小さい子供のうちに直すことができれば健康的なお口の発達にも繋がりやすいです。歯科医院には、正しいお口の使い方を身につけてもらうための専門的なトレーニングを行っているところもあります。
大人になってからも矯正治療はできますが、骨格ができあがっているので顎の骨格を拡大する矯正治療を行うことが難しくなります。その分、抜歯矯正により歯を動かすスペースをつくったり、骨格に問題がある場合は外科治療を伴う矯正治療が必要になることもあります。そのため、歯並びや咬み合わせに問題がある場合は子供の時期に矯正治療を始めていただくとことがおすすめです。
子供のガミースマイルにインビザラインは適用可能?
インビザラインによるガミースマイルの治療は可能な場合もあります。しかし、重度のガミースマイル、いわゆる骨格自体に問題がある場合はインビザラインは適応できません。軽度のガミースマイル、いわゆる歯並びに問題がある場合はインビザラインが適用できる場合もあります。
インビザラインが適用できるかどうかはガミースマイルが何が原因でおこっているかが判断材料になります。しかし、見た目だけではその原因はわかりません。お子さんのガミースマイルが気になったらまず歯科医院で相談してみましょう。
子供においては歯の生え換わりによりガミースマイルが目立たなくなってくるケースもあります。しかし、可能性として低いのが現状です。当院では、小さいお子さんからでも始められるお口周りの骨や筋肉の正常な発達を促せるような専門的なトレーニングも行っております。
子供の矯正治療は体の成長に合わせて始めると効果がでやすいため治療を始める時期が非常に大切になります。
当院では無料カウンセリングも実施しておりますのでお子さんのお口のことで気になることがありましたら早めにご相談ください。