八重歯は抜歯がベスト?虫歯にならないための予防方法と歯並びの関係を解説
【監修:歯科医師 長谷川雄士】

八重歯があると「かわいい」という印象があるかもしれませんが、実は八重歯は不正咬合の一つで虫歯になりやすいリスクのある歯です。では、八重歯が虫歯になったら抜歯が必要なのでしょうか?八重歯の虫歯予防について、詳しくお話していきます。
【目次】
1.虫歯になりやすい八重歯、その原因とは?
2.八重歯の虫歯治療
2-1 ①症状がほとんどない虫歯
2-2 ②しみる・痛む、神経まで達した虫歯
2-3 ③歯の根っこまで及ぶ重度の虫歯
3.八重歯が虫歯になったら抜歯の選択も?
4.抜歯と非抜歯、どちらにもあるリスク
5.健康な八重歯は放置していいの?
6.虫歯を防ぐ、予防ケアのポイント
7.八重歯の虫歯も歯並びも矯正治療で解決
7-1 八重歯の矯正方法とは
8.八重歯の矯正治療はインビザラインにおまかせ!
虫歯になりやすい八重歯、その原因とは?
八重歯は他の歯より外側に飛び出して生えている歯です。
- 隣の歯と重なっている部分が多い
- 他の歯より上側に生えている
このような生え方の八重歯は食べ物のカスや汚れが溜まりやすいだけではなく、歯ブラシが届きにくいので汚れが落ちにくいです。そして歯ブラシだけではしっかり汚れを落とすことがとても難しいです。
また、他の歯より外側に生えているため、八重歯を支えている骨や歯肉は薄いので歯肉が下がりやすい環境です。これは歯の根っこの部分が露出しやすくこの部分は柔らかいため汚れが溜まると虫歯のリスクが高くなります。
八重歯が虫歯になって治療をした場合、隣の歯と重なる部分が多いので他の歯よりも治療が難しく虫歯が再発しやすいことも注意が必要です。
八重歯の虫歯治療
虫歯にはC0~C4というように段階があり、それぞれ治療方法が異なります。ここでは、虫歯の段階別の治療方法をご紹介いたします。
①症状がほとんどない虫歯
初期の虫歯はC0~C1が当てはまります。
C0は痛みや症状は何もなく、この段階では治療よりも予防で虫歯の進行を防ぐことができます。
C1は冷たいものがしみたり甘いものがしみるなどの痛みや症状ほとんどない虫歯です。
エナメル質という歯の表面が虫歯になり、白濁した斑点や茶色く変色することがあります。その部分を削って歯の色と同じ色のコンポジットレジン(CR)という詰め物をして終了します。
②しみる・痛む、神経まで達した虫歯
虫歯が初期段階から進行するとC2~C3と診断されます。
冷たいものや甘いものがしみるようになり、更に進行して歯の神経にまで達するとズキズキと痛むようになります。虫歯を削って詰める、もしくは歯の神経を抜く必要があります。神経の治療を完了した後は、削った部分が小さければ、前述のコンポジットレジンで詰めるか、金属の詰め物をつけていきます。虫歯が大きくて大幅に削った場合は、根っこの上に土台を作り、白い被せ物か金属で被せ物を作成して歯を覆い被せます。
③歯の根っこまで及ぶ重度の虫歯
虫歯の進行が重度になると、C4と診断されます。
C4は歯冠と呼ばれる口を開けると見える歯の硬い部分が完全に崩壊され、歯の神経が死んでいます。歯の根っこまで虫歯が進んでいる状態なので残すことができず、抜歯が必要です。根っこまで虫歯が進んだ歯をそのまま放置すると、根っこの先に膿が溜まり、膿の袋ができて痛みや腫れの原因になります。
歯を抜歯した後は、隣の歯と支え合うブリッジ、骨に人工歯根を植立するインプラント、入れ歯の3つの方法があります。歯を抜いたまま放置すると、両隣の歯が傾いてきて噛み合わせが悪くなり、歯並びも悪化する恐れがあります。
八重歯が虫歯になったら抜歯の選択も?
八重歯は前から3番目の犬歯を指すことが多いのですが、犬歯は全ての歯の中でもとても重要な歯です。犬歯は根っこが長くしっかりしていて寿命も長く、噛み合わせや他の歯に負担がかからないような重要な役目を持っています。しかし、事情によっては抜歯も検討されます。
- 虫歯が酷く、根っこしか残っていない状態、歯が縦に割れている場合
- 八重歯が歯列から外にはみ出していて、八重歯以外の歯の噛み合わせに問題がない場合
- 八重歯と隣同士の歯が重なり合っていることで他の歯の歯周病のリスクが高くなる場合、もしくはすでに歯周病が進行している場合
このような八重歯の状態であれば抜歯をした方がいい場合もあり、慎重な判断が必要です。
抜歯と非抜歯、どちらにもあるリスク
八重歯を抜歯する場合と抜歯をしない場合、それぞれどんなリスクがあるのでしょうか?
【抜歯のリスク】
●噛み合わせなどのバランスが悪くなる
八重歯となる犬歯は噛み合わせに重要な役割を持っているので、抜歯をすることで口全体のバランスが悪くなる可能性がある
●健康な歯を失う
歯の長さが長く、寿命も長い歯を抜歯して失うこと自体がリスクになる
●顔貌が変わる
八重歯を抜歯することで口元が痩せて見える、老けて見えるなどの変化が生じる
【非抜歯のリスク】
●周りの歯が重なることで虫歯のリスクが上がる
八重歯と重なり合っている歯は歯ブラシが届きにくいため歯周病や虫歯のリスクが上がる
●虫歯が再発しやすい
虫歯を治療したあとも歯磨きのしにくさは変わらないため虫歯が再発する恐れがある
健康な八重歯は放置していいの?
八重歯を放置することで虫歯や歯周病以外にも様々なリスクが考えられます。
●噛み合わせが悪いままになる
本来、上下の向かい合う歯で物を噛むという機能が、八重歯の犬歯の場合は噛み合わないため果たされない
●ケガや口内炎のリスク
八重歯の先は尖っているので、唇を噛んで傷付けたりその傷が元で口内炎になりやすかったりする
●歯肉が下がりやすい
八重歯は他の歯より飛び出ているのでブラシの圧が強くかかりやすい。また、骨が薄いので歯肉が下がりやすい
●口が閉じにくい
八重歯が飛び出していることで口が閉じにくい場合があり、口の中が乾燥し口臭の原因になる菌が増殖しやすい環境になる
●コンプレックスを持ったままになる
「八重歯はかわいい」という捉え方は人それぞれですが不正咬合の1つには変わりなく最近では悪い印象を持たれやすい
虫歯を防ぐ、予防ケアのポイント
八重歯が虫歯にならないようにするにはどんなケアが必要でしょうか。ポイントをあげてみます。
1、正しい方法で歯磨きをして汚れを確実に落とす
八重歯は歯が重なり合っているため、歯ブラシの毛先が届きにくくなります。歯ブラシの他にデンタルフロスやタフトブラシなどを使って、丁寧なブラッシングをします。その際にゴシゴシ力を入れてこするのではなく、鏡を見ながら歯ブラシの毛先が歯面や歯と歯茎の境目に当たっていることを確認することが大事です。
2、定期的なプロのチェックとクリーニングを受ける
自分で丁寧な歯磨きをしていても磨き癖などによって磨き残しが生じてしまいます。また、お口の変化は自分で気付きにくいので、歯科医院での定期検診を受けて、プロフェッショナルなクリーニングをしてもらうことが大切です。
3、八重歯を矯正治療して磨きやすくする
八重歯の様に悪い歯並びを整えることが最も重要な虫歯予防とも言えます。
歯並びを整えると、歯磨きがしやすくなるだけではなく、噛み合わせも良くなりしっかり噛めるようになるので消化も良くなるなど、全身にも良い効果が期待できます。
また、正しく噛み合っていなかった八重歯が歯列矯正で正しく噛み合わせに加わると、奥歯の負担を軽減するので、歯全体の寿命を延ばします。
八重歯の虫歯も歯並びも矯正治療で解決
八重歯を矯正治療によって歯並びの改善を行うことで、お口の中の様々な問題を防ぐ糸口となります。
1、虫歯や歯周病を防ぐことができる
歯が重なり合っている部分がなくなるので歯磨きがしやすくなるので虫歯や歯周病を防ぐことができます。
2、噛み合わせの問題を改善できる
八重歯は噛み合わないことが多いのでその分他の歯に負担がかかりますが、正しく噛み合うことで他の歯の負担を軽減します。
3、食事がしやすくなる
噛み合わせが良くなるとしっかり噛めるようになり、食べ物が歯に引っかかることも少なくなります。
4、歯の先で唇を切ることや口内炎を防ぐ
唇や頬粘膜を噛んだり切ったりすることが少なくなり、口内炎を防ぎます。
5、口臭を防ぐ
八重歯で口が閉じにくくなると口内が乾燥し口臭が酷くなりますが、歯並びが整うと口が閉じやすくなるので口臭を低減できます。
6、口元の印象が良くなる
八重歯を含め、歯並びを整えることで口元の印象が明るく変わり印象が良くなります。
7、頭痛や肩こりの解消
噛み合わせがよくなると顎の負担が軽減されるため全体のバランスが整い、頭痛や肩こりが解消されることがあります。
このように八重歯の矯正を行うことで多くのメリットがあることが分かります。
八重歯の矯正方法とは
八重歯の矯正治療は主にワイヤー矯正とマウスピース矯正の2つの方法があります。
どちらの治療方法が適しているかは、お一人お一人の歯並びによって変わります。
それぞれの治療方法のメリットとデメリットを解説します。
●ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットと呼ばれる装置とワイヤーを装着して歯を動かして歯並びを整えます。
【メリット】
- 歯の位置を細かく動かすことができる
- 難しい症例でも対応可能
- 装置が固定されているので取り外しがない
【デメリット】
- 歯の表面に装置があるので目立つ
- 装置があるために食事や歯磨きがしにくい
- 痛みが強く出ることがある
- 装置があるので口が閉じにくくなる
- 裏側に装置を装着した場合、話しにくくなる
●マウスピース矯正
透明なマウスピースを装着して定期的にマウスピースを交換しながら歯並びを整えます。
【メリット】
- マウスピースは透明なので装着していることが目立ちにくい
- マウスピースは歯に密着しているので違和感が少ない
- 痛みが少ない
- マウスピースは取り外せるので食事や歯磨きがいつも通りできる
【デメリット】
- 1日20時間~22時間は装着が必要
- マウスピースをしたままの食事や水以外の飲み物ができず、装着前に歯磨きが毎回必要
- マウスピースだけでは治療が難しい場合は他の方法と併用することがある
- 取り外せるため紛失する場合がある
八重歯の矯正治療はインビザラインにおまかせ!
八重歯の矯正治療は、軽度であれば部分矯正ができるケースもあります。
また、IPRといわれる歯と歯の間を削ってスペースを作ることや、歯を外側に並べるように移動させてスペースを作る方法を併用して、非抜歯で八重歯の歯並びを整えることができる場合もあります。その場合は全体矯正で歯全体を動かすことが必要です。
インビザラインならそのどちらにも対応しているので、計画通りマウスピースを装着することで痛みや違和感が少ない矯正治療が可能です。また、虫歯になりやすい八重歯は、マウスピースを取り外して歯磨きができるインビザラインで安心して治療を進めることができます。ご自身の八重歯はどんな治療が適しているのか、少しでも気になることがありましたらお気軽に当院にご相談下さい。