１本だけねじれた前歯、部分矯正は有効？治療方法を矯正医が解説
【監修：歯科医師 長谷川雄士】
前歯1本だけねじれているだけなのに、全顎矯正が必要だと思われている方は少なくありません。
全顎矯正だとどうしても治療に戸惑ってしまったり、迷っているうちに時間が過ぎていたということはありませんか？前歯のねじれの解決方法を詳しくお話していきます。
【目次】
１、部分矯正とはどんな治療？
・ねじれて生える前歯、原因は？
２、前歯のねじれは部分矯正で改善できる？
・部分矯正で改善が期待できる症例
・部分矯正と全体矯正、その判断基準とは
３、部分矯正の治療方法
①マウスピース矯正
②ワイヤー矯正
セラミック矯正の場合
４、知っておきたい部分矯正の注意点
５、ねじれた歯が気になる方は当院へ
部分矯正とはどんな治療？
矯正治療は大きく分けて全体矯正と部分矯正の2つの方法があります。
前歯のねじれだけを治療したい場合は部分矯正で行うことが多いです。部分矯正は全体矯正と比べてどんなメリットやデメリットがあるのか挙げてみます。
【メリット】
- 数本の歯(２～8本程度)を整えることができる
- 主に前歯部分の治療に適している
- 前歯のねじれ、軽度のガタガタ、軽度の出っ歯に対応できる
- すきっ歯に対応できる
- 全体矯正に比べると治療期間が短い
- 使用する装置や器具が少ないので費用も抑えられる
- 効果を感じるのが早い
- 部分的なので痛みが少ない
- 気軽に治療開始できる
【デメリット】
- 噛み合わせの調整はできない
- 歯を動かす量や方向は小さい
- 後戻りすることがある
- 骨格に問題がある場合は対応できない
- 前歯が噛み合わない開咬や深く噛みこむ過蓋咬合には対応できない
ねじれて生える前歯、原因は？
前歯のねじれは様々な原因があると考えられています。
十分なスペースがない
顎の成長が小さいと全ての歯が綺麗に並んで生えるスペースが足りず、前歯が押し出されてねじれることがあります。
乳歯が遅くまで残っていた
永久歯は乳歯が抜けないと生えてきません。他の永久歯が生えた後に生えてくると、生えるスペースがなく他の歯の後ろ側に生えたり、斜めにねじれて生える場合があります。
乳歯がひどい虫歯
虫歯がひどくなると歯の根っこの先に膿の袋ができることがあります。乳歯の後から生えてくる永久歯はこの膿の袋を避けて生えようとするので、歯がねじれて生えてきます。
過剰歯がある
永久歯の歯の本数は親知らずを入れて全部で32本です。それ以外の歯が生えることがあり、それを過剰歯といいます。過剰歯があると、本来生えるべき歯が邪魔をされて正しい位置に生えずに捻じれることがあります。
前歯のねじれは部分矯正で改善できる？
部分矯正は主に前歯の歯列の乱れを改善する場合に選択される治療で、前歯のねじれも部分矯正で改善が期待できます。
部分矯正は2本～8本の歯が対象となり、前から4番目の歯までがそれに当たります。それより奥の歯に問題がある場合は全体矯正が選ばれることが多いです。
しかし、前歯１～４本でも部分矯正ができない場合があります。それは、骨格によって起こる出っ歯やガタガタの度合いが重度の場合、噛み合わせが悪い場合です。このようなケースでは部分矯正を希望しても改善が難しいため全体矯正となります。
部分的な歯並びは改善できますが、その症例は限られます。部分矯正ができる具体的な症例を次に挙げていきます。
部分矯正で改善が期待できる症例
軽度の出っ歯
歯が前方に生えている場合の中でも、生える方向によって出っ歯となっている前歯は部分矯正で改善が期待できます。骨格によって歯が大きく前に出ている場合は部分矯正では対応が難しい場合があります。
軽度の八重歯・ガタガタの前歯
少しの八重歯、前歯が少しだけガタガタしている場合は、歯と歯の隙間を少し削ってスペースを作り、そこに歯を並べる方法で部分矯正ができるケースがあります。
軽度のすきっ歯
上の真ん中の前歯に隙間が開いているすきっ歯や、まんべんなく歯の隙間があるすきっ歯は隙間を埋めるように歯を動かして歯並びを整えます。
前歯1～２本だけねじれている、傾いている
歯が並ぶアーチからはみ出るようにねじれたり傾いたりした歯は、歯と歯の間を少し削ってスペースを作り正しい向きにする、部分矯正で改善が期待できます。
矯正後の後戻り
矯正治療をしたあとに、歯が元の位置に戻ろうとすることを後戻りといいます。後戻りによって前歯がガタガタしてしまった場合など、部分矯正で整えることができます。
部分矯正と全体矯正、その判断基準とは
部分矯正ができる判断基準とはどんなことがあるのでしょうか。
整えたい歯の本数
前歯から数えて左右4番目くらいまでの1本～8本で軽度の歯の乱れが対象
歯を並べるためのスペースが確保できるか
歯と歯の間を削って確保できるスペース3mm以内に動かせる歯が対象
噛み合わせは関係ない場合
噛み合わせに問題のない歯の乱れが対象
開咬
前歯が噛み合っていない開咬は部分矯正では対応できない
骨格の問題
骨格の問題で起こっている出っ歯や受け口は全体矯正や他の治療法が併用される
部分矯正の治療方法
部分矯正も全体矯正と同様にマウスピース矯正とワイヤー矯正で歯並びを整えていくケースが多くあります。マウスピース矯正とワイヤー矯正について、メリット・デメリット、費用や期間の目安を含めて詳しく解説します。
①マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、透明なマウスピースをある一定期間毎に新しいマウスピースと交換をしながら歯並びを整えていく治療です。取り外しができるので、歯磨きや食事の際には取り外していつも通り行えます。
【メリット】
- 装置が透明なので装着していても目立たず、矯正治療中だと気付かれにくい
- 痛みや違和感がほとんどない
- 歯磨きがしやすいので虫歯や歯周病にかかりにくい
- 食事の制限がほとんどない
- 自分でマウスピースの交換ができるので通院回数が少ない
- 治療中に起こるトラブルが少ない
- 金属を使用しないので、金属アレルギーの心配がない
【デメリット】
- 1日20時間～22時間の装着が必要
- 水以外の飲み物や食べ物を食べた後は毎回歯磨きが必要
- マウスピース自体の清掃が必要
- 紛失する可能性がある
- ルールを守って自分でマウスピースを交換する必要がある
【費用の目安】
- 費用：１０万円～40万円
【治療期間の目安】
- 治療期間：2ヶ月～1年半（歯並びの状態や本数による）
②ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とは、装置やワイヤーを歯の表面に装着することで歯の根っこに力を伝え、歯を動かしていく矯正治療です。ワイヤー矯正には表側矯正と裏側矯正、ハーフリンガル矯正の３つに分けられます。
【メリット】
- 矯正器具は固定されているので取り外しがない
- 細かい動きにも対応できる
- 多くの症例に対応できるので治療の幅が広い
- 歯を効率よく動かせる
【デメリット】
- 装置が目立ちやすい
- 痛みや違和感が強く出ることがある
- 装置が壊れたりするので固いものが食べられないなど、食事の制限ががる
- 装置があるので食べ物が食べにくい
- 歯磨きが難しいので虫歯や歯周病になりやすい
- 矯正器具が外れることがあり、口の内側を傷付けたりする
【費用の目安】
- 表側矯正３０万円～６０万円
- 裏側矯正40万円～70万円
- ハーフリンガル矯正 30万円～70万円
【治療期間の目安】
- 表側矯正2ヶ月～1年半
- 裏側矯正6ヶ月～1年半
- ハーフリンガル矯正 5ヶ月～1年半
セラミック矯正の場合
マウスピース矯正やワイヤー矯正以外にも、被せ物で歯並びを整えるセラミック矯正という方法もあります。歯を削ってジルコニアやセラミックなどを被せるので、歯の色などの調整もできます。
【メリット】
- 治療期間が短い
- 他の矯正治療より費用を抑えられる
- 歯を削っても仮歯があるので、治療中ということが分かりにくい
- 好きな歯の色や形にすることができる
- 治療中の痛みや違和感が少ない
【デメリット】
- 健康な自分の歯を削る必要がある
- 場合によって神経を抜く治療をしなければいけない
- 歯ぎしりや食いしばりがあると割れたりすることがある
- 天然歯(自分の歯)と比べて色味が変わってくることがある
- 被せ物と自分の歯との境目から虫歯や歯周病になりやすくなる
【費用の目安】
- 1本：１０万円～２０万円（材料、土台の有無によって異なります）
【治療期間の目安】
- １ヶ月～３ヶ月（神経の治療などが必要な場合など治療内容によって異なります）
知っておきたい部分矯正の注意点
これまでご紹介してきた部分矯正について、実際にご自身が受けるとなると何が一番いい治療方法なのか迷われることでしょう。部分矯正を行う際には様々な注意点があります。
歯を削る必要がある
歯が並ぶスペースを確保するために歯と歯の間を数mm削って隙間を作る場合があります。
後戻りしやすい
部分矯正は動かせる歯が限られるため、無理矢理歯を動かして並んだとしても、周りの歯からの力が働いたり、支えていた骨が固まっていないと歯が元の位置に戻る「後戻り」することがあります。
部分矯正では対応できない場合がある
「少しだけ歯がねじれているだけだから部分矯正ができる」と思っていても、実際には前歯が噛み合っていない開咬の場合や、噛み合わせに大きな問題がある場合は部分矯正だけでは改善できないケースもあります。
セカンドオピニオンが大切
部分矯正は限られた歯の本数の歯並びを整えるので、歯科医師の知識や技術で左右されます。１つの歯科医院に決めるのではなく、違う歯科医院でもカウンセリングを受けることをお勧めします。
ねじれた歯が気になる方は当院へ
気になる歯の捻じれは当院へご相談ください。どんな治療が最適なのか、メリット・デメリットも含めてしっかりご説明いたします。
当院では無料でカウンセリングを行っております。お気軽にお問合せ下さい。